早春の寒いうちから出回り、春の訪れを教えて呉れる野菜、菜の花。
菜の花のことを、菜花(なばな)といったり、花菜(はなな)と言ったりすることがあります。
また、有名な童謡「ちょうちょう」には、「なのはにとまれ」という歌詞が出てきますね。
菜の花、なばな、花菜、なのは、いろいろな言葉があるのですが、改めて考えるとどう使い分けたらいいのか、意味はどう違うのか悩みますよね。
菜の花、なばな、花菜、なのは、アブラナ科の植物をさす言葉ですが、細かく見ていくと表しているものが少しずつ違います。
今回は、菜の花、なばな、花菜、なのはの言葉の違いに注目し、意味の違いを解説します。
知らなくても菜の花を食べることはできるけれど、知っていたらもっとおいしく案じられるような豆知識もご紹介します。
菜の花にまつわる言葉を知って、日本語の奥深さや、菜の花を食べて季節のうつろいを感じながら菜の花を食べてみてくださいね。
菜の花と菜花(なばな)の違いは?
菜の花のことを、菜花ということがあります。
菜花は、「なばな」と読みます。
ひらがなで「なばな」とかかれることもありますが、「菜花」と「なばな」は、漢字で表記するかひらがなで表記するかの違いだけで、意味の上で多きな差はありません。
「菜の花」と「菜花」は、あまり区別されずに使われることも多いのですが、厳密には違うものをさしています。
菜の花とは、アブラナ属アブラナ科の植物の総称です。
菜の花と総称されるものの中には、食用、採油用、観賞用など、いろいろな用途のものが含まれます。
菜の花と総称されるもののうちから、食用にするものを「菜花・なばな」とよびます。
食用になる菜花(なばな)には、かぶ、白菜、小松菜、チンゲン菜、高菜など、多くのものがあります。
また、青果の現場では、つぼみを中心に若い葉や茎を食べる在来系のものを「菜の花」、若い花茎や葉を食べる西洋系のものを「菜花(なばな)」と言い分けていることもあります。
菜の花と花菜(はなな)の違いは?
野菜の菜の花、菜花(なばな)のことを、花菜(はなな)ということもあります。
広い意味では、菜花(なばな)と花菜(はなな)は大きな差はありません。
しかし、京都の長岡京市などで盛んに栽培される、「伏見寒咲きなたね」という野菜は、「花菜(はなな)」とよばれています。京都で「花菜」というと、「伏見寒咲きなたね」のことで、京野菜の一つとされています。
アブラナ科の野菜で、つぼみを食べる菜花の一種です。
「伏見寒咲きなたね」は、豊臣秀吉の時代から、観賞用、切り花用として栽培されていたものが、若いつぼみを摘み取って食用として食べられるようになったものだとされます。
京都では、春に花菜を漬物にして食べます。菜の花漬け、花菜漬けと呼ばれる、京に春の訪れを告げる食べ物です。
花菜の香りやほのかな苦みを楽しめるよう、優しい味に仕上げられます。数多くある漬物屋さんに菜の花漬けが並ぶのは、京都の春の風物詩です。
また、花菜漬という言葉は、俳句の春の季語にもなっています。
花菜漬箸の終りに香りけり 能村登四郎
(花菜漬けを箸で口に運ぶと、最後にふわりと香りが広がり、春らしさを実感したことだ。)
数多くの句に、花菜漬が詠みこまれています。
参考 春を呼ぶ野菜「花菜」/京都府ホームページ (pref.kyoto.jp)花菜 | 【公式】JA京都 暮らしのなかにJAを (jakyoto.com)花菜を「かさい」と読むと?
「花菜」と書いて訓読みで「はなな」と読むと、前の項目で解説したとおり、アブラナ科の野菜のことなのですが、「花菜」と書いて「かさい」と音読みすることもあります。
「花菜」を「かさい」と読むと、アブラナ科以外の野菜もふくまれてきます。
「花菜(かさい)」とは、つぼみや花茎を食べる野菜の総称です。
菜花類、ブロッコリー、カリフラワーなどのほか、ミョウガ、ふきのとう、ハナニラ、食用菊、穂じそ、花オクラなどが含まれます。
「花菜(かさい)」は、「根菜(こんさい)」、「果菜(かさい)」のように、植物としてのどの部位を食べるのかによって野菜を分類する言葉の一つになります。
菜の花となのはの違いは?
「菜の花」は花、「なのは」は葉っぱのことです。童謡「ちょうちょう」に、「ちょうちょう ちょうちょう なのはにとまれ なのはにあいたら さくらにとまれ」という歌詞がありますね。
この「なのは」は、漢字で書くと、「菜の葉」となります。「菜」とは、アブラナ属アブラナ科の植物の総称です。
モンシロチョウは、アブラナ科の植物の葉に卵を生みつけます。
よく見かける例としては、キャベツにつくアオムシを思い浮かべていただければわかると思います。
キャベツはアブラナ科の植物で、アオムシは成長してモンシロチョウになります。
童謡「ちょうちょう」で歌われている蝶は、産卵のため菜の葉にとまっているのです。
菜の花と桜の開花は重なることが多いです。
黄色い花を咲かせたアブラナ科の草(菜)の葉っぱと桜の花を蝶が飛び交う春らしい光景を、童謡「ちょうちょう」は歌っているのです。
まとめ
菜の花という言葉は、広い意味では食用に限らず、アブラナ科の植物をさし、菜花は食用の菜の花をさします。
野菜としての菜の花や菜花は、いろいろな種類があるのですが、在来種のつぼみ中心に食べるものが菜の花、西洋種の茎や葉を中心に食べるものが菜花と呼ばれて売られていることも多くあります。
京都では、伏見寒咲きなたねを花菜(はなな)と呼んで、春の味覚として珍重しています。
童謡の「ちょうちょう」でおなじみの「なのは」は、「菜の葉」で、ちょうが卵を産むアブラナ科の葉っぱのことなのです。
菜の花を表す言葉は数多くあり、ややこしく感じられますが、言葉がたくさんあるということは、それだけ文化が豊かだということでもあります。
菜の花にまつわる言葉を知って菜の花を味わったら、今まで以上においしく感じられるかもしれません。
菜の花を食べるときには、菜の花にまつわる言葉のあれこれをぜひ思い浮かべて食べてくださいね。
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